仲間の死

バスケ仲間が亡くなった。



一つ上の先輩だった。
彼とは職場のバスケ部仲間だった。



前日まで、いたって健康で、なんの前触れも無かったそうである。
夜、寝た後、二度と目が覚めることがなかった。
心不全だった。
まだ幼い2人の子を残し。




勤務地が異なるため、彼は向こうの職場のバスケ部だったが、一緒にプレーする機会もあった。



抜群にバスケの上手い人だった。
もう、別世界のレベルだった。



彼がプレーする試合は、彼の手の上で転がされてると言っても過言では無いほど、彼は試合を支配、コントロールしていた。
見ている人は、誰もが魅了されていた。



僕は彼のプレーを見ているのが大好きだった。
僕も、彼の真似をしたくて、彼に近づきたくて、少しでも盗めるものは盗みたくて。
彼のプレーを食い入るように見つめていた。



特別に身体的に恵まれていたわけではない。
身長も僕の方が遥かに高く、ジャンプ力なども僕の方が上だった。
身体能力で言えば、僕の方が優れていただろう。
それでも、誰も彼を止めることができなかった。



彼は僕には到底追いつけないものをたくさん持っていた。
テクニックでもありカンでもあり。
彼は味方を使うことにも長けていた。
彼と一緒にプレーをすると、僕の力を最大限に生かしてもらえた。




以前、彼と呑んだ時に説教されたことがある。


「オマエはサボっている」 と。



彼が僕のプレーを初めて見た時に、「コイツは使える」と思ったそうである。
その印象を持っているために、今の僕のプレーが歯がゆいと言う事だった。




僕にとって、こんなに嬉しい説教は無かった。
彼に認めてもらえてた自分が、とても嬉しかった。
その期待に答えたくて、必死にプレーをしていた。

もう、そのプレーを見せることができない。
彼のプレーも見ることができないが、僕の目にしっかり焼き付いている。




僕にとって、バスケ仲間を失うのは2度目である。
高校の先輩で、OB会で一緒にプレーしていた。
大変お世話になり、かわいがってもらった。

奥さんや職場の仲間と夜釣りに出かけ、海に落ちた奥さんを助けるために海に飛び込み、そのまま帰らぬ人となった。
結婚して半年後のことだった。




今までに、多くの死を見つめてきた。
僕よりも若い従兄弟や幼馴染、同級生達の事故死や自殺。



何度も経験したから慣れるなんてことは決して無い。
身近な人の死など見たくも無い。


しかし、それらと向き合い、冷静に見つめ、悲しみも乗り越えてきた。




今回も、奥さんの挨拶で気丈にも


「子供、家族と力を合わせ、笑顔を忘れずに頑張っていくことを約束します。」


の言葉に、唯一救われた気がしました。




わざわざ日記に書いて公開するべき内容では無かったのかもしれないが、この場を借りて、謹んでご冥福をお祈りします。